生産性

動機

前に読んだ自分の時間を取り戻そうで、生産性の重要性を学んだ。生産性についてもうちょっと深掘りしてみようと思い本書を手に取った。

著者について

著者はマッキンゼーで人事の仕事を長く行っていたため、個人の生産性というよりは組織の生産性について述べている部分が多い。組織の生産性についても学びになるところが多かった(ぶら下がり中高年社員の対応など)

では本書の内容について見ていこう。

量を追う発想が生産性を下げる

本書で例に出ているのが採用についてだ。10人採用したい場合、一番効率がよいのが採用したい10人が応募してくれることだ。
現実的にはそうはいかないかもしれないが、仮に100人応募してくれて5人採用できた場合、もう100人応募者を集めなければいけないという発想がよくないと言っている。
もう100人応募者を集めるのではなく、採用できる人材にいかにして応募してもらい採用率を上げるかを検討しなければならい。これが生産性の向上ということである。

採用だけではない。営業活動でも制約が取れるのが5件訪問につき1件の割合だとすると、10件の制約が必要な場合は50件の訪問が必要、なので50件の訪問を目標にするぞ!みたいな話が実際にある(自分が働いている会社でもある)。これでは、より多くの成果を求められたら、1日でどれくらい訪問できるか?という思考になってしまう。そうではなく、成約率をあげることが大事だ。

Webの世界でもコンバージョンを追う場合に流入を増やすよりもコンバージョンレートをあげることを考えるべきだ。

生産性向上のための4つのアプローチ

前にも書いたように、生産性を構成する要素は、リソース(インプット)と成果物(アウトプット)である。
生産性を正しく理解されていない組織では、

  • 成果を増やすために安易な資源の追加投入が行われ生産性が低下する
  • コスト削減以外の手を打たないため、生産性の向上幅はごくわずか

と記されている。そのチームが抱えている問題・課題を理解することなく、人を増やしたり減らしたりするべきではないということだ。

改善(インプルーブメント)と革新(イノベーション)というアプローチ

リソースを減らす・成果物を増やすアプローチとして、改善(インプルーブメント)と革新(イノベーション)が紹介されている。それぞれをかけあわせて、

  • 改善による投入資源の削減
  • 革新による投入資源の削減
  • 改善による付加価値の増加
  • 革新による付加価値の増加

がある。
そもそもこの製品、タスクは必要なのか?と言った議論からリソースを減らす・成果物を増やすのが革新であり、既存のやるべき業務を短時間で実現する、より良いものにしていくのが改善である。

ビジネスイノベーションに不可欠な生産性の意識

イノベーションには、時間的な余裕と問題解決のモチベーションが必要である。その二つを生産性を高めることで生み出すべきだと言っている。イノベーションを起こすこと自体に生産性を求めない。イノベーションを起こすための必要な二つの要素を捻出するために組織の生産性をあげるべきだ。

Time for Innovation

自分の時間を取り戻そうにも書いたが、通常、人は「まずは絶対に終わらせなければならない仕事を先に終わらせよう」と考える。それはそうだ。本書にも記されているが、やらなければいけない作業を放置して「イノベーションな思考をしていました」という人は組織から受け入れられない。
昔、業務を行わずに、読書会や、採用についての仕事を優先して行っていたメンバーがいたが、やはり受け入れられずに辞めていった。
通常業務の生産性を向上することで時間的な余裕を産み出し、その時間をイノベーションのために投資する。そして、実現できたイノベーションによってより生産性をあげるというスパイラルを作りたい。そのためには、まず、組織全体に生産性を重視した働き方を定着させることが必要である。

Motivation for Innovation

技術的なイノベーションは、ひょんなkとから生まれることがあるが、ビジネスイノベーションはそうではない。
ビジネスイノベーションが起こるのは、その源として常に「問題意識」と「画期的な解決法への強い希求心」の二つが必要。
なので、正しく問題を認識する力と、その問題を解決したいという強い動機付けを持たせることが不可欠である。
これがMotivation for Innovationであり、それを持たせるために必要なことが、「生産性という概念を日常的に強く意識させておくこと」である。

組織での取り組み

やはり特定の個人だけでなく、組織全体で生産性の概念をより深く理解し、生産性を上げていくのだという強い気持ちを共有することが重要。それによって、Time for InnovationとMotivation for Innovationを作り出していくことが求められている。
自ら生産性の向上について取り組み、その内容をメンバーに発信して動機付けを行っていこうと思う。

量から質の評価

よくある会議時間の短縮、業務時間の短縮(働き方改革・ノー残業デーの設定など)は、時間を減らすことが目的ではない。時間を減らした中でやるべきことを終わらせるようにするという生産性の向上が目的なのである。
会議であれば、事前にゴールを共有し、時間内に達成できるようにする、もしくは会議中に検討するだけではなく実際にアウトプットを作成するなどして、会議の生産性をあげることが重要である。
業務であれば、残業せずにいかに早く仕事を終わらせられるかを考え実行することである。量の規制だけでは全く意味はない。

かといって、突然意識を変えるのは難しい。

量から質への意識転換を促すためには、正式な評価制度だけではなく、日々の上司からの意識づけが必要だという。
上司が(自分が)常にせいさんんせいを意識した仕事の進め方、指摘の仕方をすることで、メンバーの意識を変えていくことが重要だ。自分たちが成長し、生産性を上げ、目の前のタスクだけではなく将来の自分への投資を行える時間を確保し、世界と戦える人材になることが求められている。

まとめ

生産性をあげる方法として日々の意識づけがとても重要だとわかった。自分に対してもそうだし、周りに対してもそうだ。組織的に行わなければいけないところも多々あるが、自分のできることからやっていこうと思う。

  • 量を追う発想が生産性を下げている。量ではなく質を追っていく。
  • 組織全体でそういった風潮を作る。
  • 生産性を向上してイノベーションを起こす土台を作る。
    • イノベーションによって生産性をあげることができ、よいスパイラルが回る。
  • 常に生産性をあげるという意識を持つ。

追記

後半には人事の考え方らしく組織全体の生産性向上について書かれている。ぶら下がり(とは書いてないが)中高年社員の対応については、はっとさせられた。ぶら下がりだから期待しないのではなく、期待しないからぶら下がりになってしまうのだという。そういう人たちにはまず、あなたにはこういうことを期待しているということを伝えるところから始めたい。


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